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試用期間っていったい何の意味があるの?

2016年04月20日
こんにちは。
社会保険労務士の杉山 加奈子です。


今回は、「試用期間っていったい何の意味があるの?」をテーマにお話させていただきます。

会社が従業員を雇い入れる場合、業務の適正や能力を判断するために「試用期間」を設けることが一般的です。
しかし、この際、注意していただきたいのが、試用期間終了後、本採用しない場合は、「解雇」となることです。
本採用していないので、解雇には当たらないと考えるのは大きな間違いです。

「解雇」は、「客観的にみて合理的な理由があり、かつ社会通念上相当である」と認められない場合には、解雇権の濫用として解雇そのものが無効となります。
また、30日よりも前に解雇予告をしないと、最大、賃金の約1ヵ月相当分にあたる解雇予告手当の支払い義務が生じます。

「じゃあ、試用期間っていったい何の意味があるの?」
との質問をよく事業主の方からいただきます。

試用期間で本採用しないことによる解雇は、解雇そのもののハードルが下がります。
つまり、試用期間中のほうが、通常の場合よりも広く解雇が認められる傾向にあります。
そういった意味で試用期間を設けるには多少の意味があるのかもしれませんが、あくまで、比較した場合であり、たとえ試用期間であっても、資質や協調性に欠けるといった理由で本採用しない場合は、実際無効となったケースもあります。


解雇そのもののハードルが下がるとは言え、さらに採用のリスクを避けたいのであれば、
採用当初は、期間雇用、つまり有期労働契約とすることをオススメします。
期間は、6ヵ月、1年等、会社で自由に取り決めることができますが、最初は、1ヵ月〜3ヵ月と短めにしておいた方が無難かもしれません。

しかし、採用する人を解雇リスクの回避といった理由のみで当然のように有期労働契約とすることは、実際の運用では注意しなければならないことがあります。

有期労働契約書を交わす場合、募集時の雇用形態は「契約社員(有期労働契約社員)」となっていなければ、後で話が違うということにもなりかねません。
また、仮に「正社員登用制度有」となっていても、正社員で働くことを希望している側からすれば、契約社員でしかも契約期間が短く更新の確約がない募集となると、何の保証もないため、敬遠する可能性が高くなります。
雇用のリスクを避けたいがために、かえっていい人材を採用できない、といった本末転倒となっては元も子もありませんので、市場のニーズとのバランスを考えた上で、有期雇用契約とするかどうかをご判断いただければと思います。

リスクヘッジの手法をお伝えしておきながら一見矛盾しているようですが、個人的には、少しでも優秀な人材を雇用したいと思うのであればリスクは付き物だと思っています。


● 編集後記 ●

最初は、パート・アルバイトといった有期労働契約の形で雇い入れ、できる人、ヤル気のある人には正社員になってもらいたい、と考える会社も数少なくありません。
そのような会社は、ぜひ正社員転換制度を導入し、助成金を活用していただきたいものです。
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11650000-Shokugyouanteikyokuhakenyukiroudoutaisakubu/0000119906.pdf

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