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振替休日の取扱いについて

2016年09月20日
こんにちは。
社会保険労務士の杉山 加奈子です。

今回は、「振替休日の取扱いについて」をテーマにお話させていただきます。

「弊社では就業規則に「代休」と「振替休日」の規程があるのですが、実態として休日出勤した分はすべて「振替休日」扱いとし、いっさい手当を支払っていない状況なのですが、問題ないですか?」

と言ったご質問をクライアント先からよく受けます。
もちろん質問をする側も正しい回答はご自身で分かっていながらも、社会保険労務士である私にあえて別の回答を期待しての質問だということはよく分かります。

私自身も返答に窮しながらも、
ただ、問題あるかないかと言われれば、労働基準法に照らし合わせると、多分に問題があります。としか言いようがありません。(^_^;)

「代休」とは、休日に休日労働を行わせた場合に、その代わりに以後の勤務日又は労働者の希望する任意の勤務日の労働義務を免除し、休みを与える制度のことを言います。
従って代休を取得した場合においても休日手当の支払いが生じ、代休日と相殺しても35%の割増分の支払い義務は生じます。

それに対して、
「振替休日」とは、法定休日に労働を行わせる場合に、休日を他の労働日に振り替える制度のことです。
この場合、代休と違って、もともと法定休日だった日は労働日となるので、休日労働に対する休日手当の問題は発生しません。
とは言え、無条件に完全相殺することはできません。

完全相殺とするには、以下の点をクリアする必要があります。

・就業規則に規定があるか
・事前に振り替える休日が指定されているか
・法定休日(週1回又は4週間に4回)は確保されているか
・週の労働時間は40時間以内におさまっているか

さらに付け加えると、賃金全額払いの原則から、同一賃金支払期間で振替休日が取得できない場合、振替出勤分の賃金(100%)を、当月賃金計算期間にいったん支払うことが必要になります。もちろん、振替出勤の結果、当該週の労働時間が40時間を超えたのであれば、超過した時間について時間外の割増賃金(25%)を追加で支払う必要もあります。

会社が意図する完全相殺での振替休日は、実際のところ難しいのかもしれません。

とは言え、お悩みのクライアント先で、就業規則の文言を変更することによりずいぶん改善されたケースもあります。

元々は、就業規則に「代休」と「振替休日」の記載が並記してあり、運用もマチマチだったのですが、

就業規則に
・休日出勤は、原則として、「振替休日」扱いとする。
・休日出勤を申請する場合は、事前に申請しかつ同時に振り替える希望の日を申し出ること。
・振り替える希望日は、原則、同一週内(起算日を日曜日とする)とすること。
・月末(賃金締切日)の週は、極力休日出勤を避けるよう努めること。

という規定を追加しました。

従業員に休日出勤及び振替日の指定をワンセットにしての申し出を徹底することで、幾分かは運用しやすくなったのではないかと思っています。


● 編集後記 ●

社会保険労務士としての立場を意識すると、どうしても労働基準法100%に則ったことしか言えません。しかし、クライアントは労働基準法上違法か違法じゃないのかそんなことは労働基準監督署の役人に聞けば誰でも分かる。一歩踏み込んだところで運用上どのように取り組んでいけばいいのかということを社会保険労務士に求めている。というのが本音の部分だと思っています。
確かに、社労士としての付加価値はまさにそこにあるものだと痛感しています。

法違反を促すことは当然社労士にあるまじき行為ですが、法遵守を押し付けるだけではなく、法違反によってどのような潜在リスクを追っているのか、最低限事業主の方に理解してもらった上で、今がダメでも将来に向けて法を遵守できるような体制づくりをお手伝いしていくのも社労士の重要な役割だと感じています。

言うは易し、行うは難しですが・・・。
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