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退職日を前倒しにしたもらう場合の留意点

2014年04月21日
おはようございます。
社会保険労務士の杉山 加奈子です。

今回は、「退職日を前倒しにしてもらう場合の留意点」をテーマにお話させていただきます。

従業員が会社を自己都合で辞める場合、退職の手続きとして、一般的に就業規則等に1ヵ月より前に申し出ることといったルールが規定されています。
従業員がそのルールを守って1ヵ月より前に申し出たとしても、実は、会社側としては、かねてからとにもかくにも早く辞めてもらいたいと思っていた従業員で、このような従業員自らの退職の申し出は、絶好のチャンスと感じる場合も少なくありません。辞めると決意した従業員に1ヵ月近くいてもらっても周りの従業員に対する影響もよくないし、どうせ大した仕事もしていないのだから、今すぐ辞めてもらいたい。辞める意思が固まっているのだから、退職日が少々早まっても何ら問題ないはず。そのように思ってしまう場合もあるでしょう。
本人が今月末までと言っているにもかかわらず、「給与の締めは10日だし、引継ぎも特にないのなら、退職日は10日でいいよね?」
このような流れで従業員の同意も得ず、強引に退職日を10日に早めた場合、後々トラブルに発展することが少なからずあります。

自分は、末日付退社で会社に申し出たにも関わらず、会社に無理矢理退職時期を早められた。これは解雇だ。よって、解雇予告手当を支払ってもらいたい。

このような不当な請求に嘆く事業主の方々を数多く目の当たりにしてきました。
確かに、そもそも退職を申し出たのは従業員からだし、どうして解雇になるのか?退職日を早めてもらっただけなのに、どうして解雇予告手当を支払わなければならないのか?と理解できず怒りを覚えるのはごもっともだと思います。

しかし、従業員は退職日を早めることに同意したでしょうか?
同意していないにも関わらず、一方的に強引に退職日を早めてしまうことは、法律上、「解雇」にあたります。
解雇か、解雇でないのか、争いに発展した場合、退職日を早めることに同意したかどうかが争点となります。
よって、退職日を会社の都合で早めてもらう場合は、従業員にその場で会社の申し出に同意したという証拠(=前倒しの日付が入った退職届)を必ず受け取るようにしてください。



● 編集後記 ●

今まで会社に迷惑をかけてきた従業員が辞めると分かった瞬間、これまでの鬱憤や恨み言を吐きたい気持ちもわからないではありません。ただ、せっかく自ら辞めると言ってくれている従業員に対して、不要なケンカを売るのは避けていただきたいものです。内心はともかく「君もいろいろ大変だったと思うけど、お疲れさま。今後の新たな活躍を期待しているよ。」と、そんな声を掛けてあげるだけの心の余裕を事業主の方にはいつももっていてもらいたいです。
理想論ではありますが・・・。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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