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能力不足を理由に解雇する場合の留意点

2014年07月20日
おはようございます。
社会保険労務士の杉山 加奈子です。
  
今回は、「能力不足を理由に解雇する場合の留意点」をテーマにお話させていただきます。
 
労働者側の事情を理由とする解雇には、精神疾患による長期欠勤、協調性が図れない・社内規律を乱す、横領等の背信行為等いろいろ考えられますが、今日は、能力不足を理由に解雇する場合についてみていきたいと思います。
 
会社は、従業員を採用する際、ある一定のパフォーマンスを期待して雇い入れます。
多少の見込み違いはあるかもしれませんが、大幅に想定外を下回るパフォーマンスだった場合、その後の対応に手をこまねくことになります。
 
完全に雇用の継続は論外というレベルのものであれば、採用後14日以内に即解雇するという手段もあるのでしょうが、なかなかそういったケースは少ないように思います(そもそもそういった人は、採用の門すらくぐれないでしょうから・・・。)。また、14日以内に即時解雇すれば、解雇予告手当支払義務は生じませんが、解雇の合理性が問われる場合は、14日以内だから正当化されるということにはなりません。
 
 
解雇する場合には、労働基準法では30日前の解雇予告通知か、30日に満たない場合は、解雇予告手当を支払えば済む話ですが、それとは別に、解雇理由の合理性の問題が生じます。客観的に合理性がなく、社会通念上相当と認められない解雇は、解雇権の濫用とされ、解雇そのものが無効となるリスクが生じるのです。
 
 
解雇の合理性は、最終的には民事で争った結果、裁判官が判断するわけですが、これまでの判例を見ても能力不足を理由に解雇した場合、それが有効とされるにはかなりハードルが高いようです。
 
 
能力不足を理由に解雇する場合には、原則として、就業規則に規定されている解雇理由を根拠に解雇することになりますが、就業規則の記載事由に該当しているからといって、解雇が当然有効であるということにはなりません。
 
 
裁判では、
1.能力不足等の程度が解雇に値するほど重大なものだったか、
  会社の事業運営に大きく支障を与えたか
2.教育・指導等によって能力不足に対して改善措置を図ったか、
  配置転換など解雇回避努力をしたか
 
等が大きく問われます。
 
しかし、人の能力不足の程度を、業務内容を100%周知していない第三者に客観的に示すことはかなり困難を要するのが実情です。
また、教育・指導によって改善措置を図れば、180°大きく変わることも現実的には正直期待薄だと思います。
 
 
実務的には、解雇よりも、まず退職勧奨を行い、本人に退職に関して合意してもらうのが後々のトラブルを回避する意味で、得策だと思います。
退職勧奨の際に、金銭提示して合意してもらうケースもあるでしょう。
 
 
退職に合意してもらった場合、必ず退職合意書を取り交わしてください。
 
退職合意書には、
 
・○月○日付の退職に合意したこと。
・合意に関して、○○の条件で合意を受け入れ、それ以外に一切の債権債務がないことを双方に確認したこと。
 
この2点は、必ず盛り込んでおきましょう。
 
 
 ● 編集後記 ● 
人間誰しも頑張れば180°大きく変われる!と強く力説されていた社長がいましたが、社長の熱い思いも悲しいかな、性善説のみで会社経営は立ち行かないものです。
 
人には適材適所があるのだから、自分の能力・キャパシティにあった職場を見つけることが労使双方にとって幸せなことだと思っています。
 
私が、まかり間違ってバスやタクシーの運転手、ヤマトや佐川急便の宅配員として採用された場合は、即時解雇間違いなしだな・・・。(^-^;
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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